横浜市では(横浜市に限らず多くの自治体で額は異なるが)本会議や委員会に出席した議員に1人1日当たり1万2千円の出席手当て(費用弁償)がお給料とは別に支給されています。今回はこの費用弁償がどのような根拠規定のもとになされているのかを調べてみました。
まずは大本の地方自治法第203条から。
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地方自治法
第 203 条 普通地方公共団体は、その議会の議員、委員会の委員、非常勤の監査
委員その他の委員、自治紛争処理委員、審査会、審議会及び調査会等
の委員その他の構成員、専門委員、投票管理者、開票管理者、選挙
長、投票立会人、開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体
の非常勤の職員(再任用短時間勤務職員を除く。)に対し、報酬を支
給しなければならない。
2 前項の職員の中議会の議員以外の者に対する報酬は、その勤務日数に
応じてこれを支給する。但し、条例で特別の定をした場合は、この限
りでない。
3 第一項の者は、職務を行うため要する費用の弁償を受けることができ
る。
4 普通地方公共団体は、条例で、その議会の議員に対し、期末手当を支
給することができる。
5 報酬、費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は、条例でこれ
を定めなければならない。
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ご覧のように第3項に「職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる」とあります。しかし、費用弁償の対象となる具体的な議員の職務については触れていません。しかも「(受けることが)できる」ですから、「受けない」という選択肢も自治体の議会を構成する議員としてはあり得るわけです。事実、費用弁償を廃止する自治体も増えてきています。それなのになぜ横浜市では、会議へ出席した議員に費用弁償がなされているのでしょう? ……という素朴な疑問はひとまずおいておいて、第5項に「額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。」とありますから、今度は横浜市の条例を調べてみましょう。
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横浜市市会議員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例
(費用弁償)
第 5 条 職務のため、市外に出張したときは、旅費を支給する。
2 前項の旅費は、横浜市旅費条例 (昭和 23 年 10 月横浜市条例第 73
号)中、特号の者に支給する額により、同条例を準用してこれを支給す
る。
3 前項のほかに、職務を行うについて費用を必要とするときは、その費用
を弁償するものとし、その額は、規則で定める。
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「職務を行うについて費用を必要とするときは、その費用を弁償するものとし、その額は、規則で定める。」とありますから、今度は規則を調べてみましょう。
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横浜市市会議員の費用弁償に関する規則
(費用弁償の額)
第 2 条 条例第 5 条第 3 項の規定による費用弁償の額は、日額
12,000 円とす
る。
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これで横浜市の費用弁償の額が日額1万2千円であることの根拠規定はわかりました。しかし、額の多さにとらわれていてはいけません。そもそも費用弁償を
地方自治法では
「職務を行うため要する費用の弁償」
横浜市市会議員の報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例では
「職務を行うについて費用を必要とするときは、その費用を弁償する」
と規定しています。
では、(お給料とは別に)かかった費用を弁償しなければならない議員の職務とはなんでしょう? 次の要綱をみてください。
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横浜市市会議員の費用弁償の支給範囲に関する要綱
(目的)
第1条 この要綱は,横浜市市会議員の報酬,費用弁償及び期末手当に関する条例
(昭和31年8月条例第30条)第5条第3項の規定により,議員が職務を行
うについて,費用を弁償する場合その支給対象を明確にすることにより,
その執行の適正化を図ることを目的とする。
(支給対象)
第2条 費用弁償の支給対象は,次の各号に定める会議等に出席したときに支給す
る。
(1)市会本会議
(2)常任委員会
(3)運営委員会
(4)特別委員会
(5)予算・決算特別委員会
(6)委員会が設置する分科会,小委員会,理事会
(7)全員協議会
2 前項各号によるもののほか,議会としての職務と議長が認めたもの。
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上記の要綱によれば、(お給料とは別に)かかった費用を弁償しなければならない議員の職務とは「会議に出席すること」なんだそうです。あはははは!(^o^) そんなばかな!(>_<) こうなると「ではなぜ一人平均
1,702 万ものお給料が支払われているのですか?」と逆に議員に質問してみたくなります。「会議に出席すること」は議員本来の職務であって、費用弁償の対象とするのには無理がありますよね?
こんなカラクリですから、最初にとっておいた素朴な疑問「なぜ横浜市では、会議へ出席した議員に費用弁償がなされているのでしょう?」の答えは「要綱に規定されているから」ということになります。つまり、これまで払ってきたので、これからも払い続けますということなのでしょう。
さらに上記要綱には「議会としての職務と議長が認めたもの」なんていう運用によっては、議員の職務がなんでも費用弁償の対象となってしまう可能性のある危ない規定もあることを指摘しておきます。
まぁ、市長や議員任せにしておくと、とんでもない税金の使われ方や根拠規定作成がされてしまうというよい事例だと思います。だからこそ、議会を含め市政一般を日頃からチェックし、選挙で適正な議員を選ぶことが大事(棄権なんてとんでもない!)になってくるわけですね。
そして、さらに前進しようとするならば 市長(行政)+議員(議会)+市民 の三位一体で根拠規定を作っていく(立法化していく)必要があるのでしょう。これは、この記事を書いている私自身の課題でもあります。
データは 2004年11月18日現在のものです
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